元日に発生した能登半島地震では、避難者の服薬の継続に、オンライン資格確認システムの「災害時医療情報閲覧機能(災害時モード)」が一役買った。石川県七尾市に診療所を構える佐原博之・日本医師会常任理事は、災害時モードについて、避難者の医療支援に「非常に役に立った」と評価。今後の災害に備え、避難所内の臨時救護所などでの活用も検討すべきだと提言している。
●災害時モード、3万2000回の利用 3カ月間で
オン資システムの災害時モードでは、被災者がマイナンバーカードや健康保険証を持っていなくとも、氏名、生年月日、性別、住所といった情報があれば、薬剤情報などを閲覧できる。能登半島地震では3月末までに約3万2000回の利用があった。特に、1月8日からの1週間は、5700回余り利用された。
佐原氏の診療所でも、避難者が患者として受診した。お薬手帳を持っていないケースが多かった。「災害時モードを活用することで、普段どんな薬を服用しているかが分かり、それに基づいて処方することができた」と話す。
●「安全な通信環境」が課題
しかし、避難所内に設置された救護所では、災害時モードは活用できなかった。安全な通信環境の整った医療機関内の資格確認端末以外では、オン資システムを利用できないためだ。
佐原氏は、避難所内の救護所に、速やかに安全な通信環境を整備できれば、薬剤情報などを閲覧できて有用だと指摘する。「モバイルファーマシーが入って、避難所に薬がある状態になれば、患者に迅速に処方できると思う」と述べた。
オン資システムは光回線で通信するが、能登半島地震では光回線が断裂したケースもあった。佐原氏は、モバイル端末で資格確認ができるシステムなどを用いれば、光回線が破損した場合でも対応できるのではないか、と提言した。
●地連ネットも「有用」
避難先での医療情報連携には、県内の医療機関が参加する地域医療情報連携ネットワーク「いしかわ診療情報共有ネットワーク」も有用だった。
佐原氏は、詳細な情報を共有できる地連ネットの特性を強調。「普段からの連携体制構築が、災害時にも役立つ」と力を込めた。