日本重症患者ジェット機搬送ネットワーク(JCCN)は25日の会見で、4月から実施している小児重症患者ジェット機搬送試験運航事業の実績4例を説明した。実際に搬送に関わった医師からは、事業の意義について「かなり手応えはある」との声が上がった。
JCCNは、昨年度にクラウドファンディングで集めた約1500万円を資金に、ジェット機を利用した広域搬送をしている。
これまでの搬送では、以下のように移動した。▽石川県→愛知県(4月19日)▽鳥取県→兵庫県(5月17日)▽新潟県→東京都(5月22日)▽九州→東京都(6月17日)―。
●緊急搬送、「数時間後にはできる」
1例目の搬送先となった、あいち小児保健医療総合センターの本村誠集中治療科医長は、これまで多数の緊急搬送に関わった経験を踏まえ、「最重症になればなるほど、関係先への根回しが必要になる」と説明。当初、ドクタージェットについても、緊急性への対応に懐疑的な部分があったと振り返った。
しかし、自身が調整役を担った2例目では、急性脳症・脳炎の患者を早急に搬送できた。「経済的支援があれば、最重症の緊急性に対応できる施設への搬送が選定できる。1時間後は無理でも、数時間後にはできる」と語った。
事業では、全国共通の1つの電話番号に搬送を要請すれば、調整が始まる体制を取っている。本村氏は「電話すれば適切な場所に運んでくれる、というシステムのモデルになってくれれば」と期待を寄せた。
運用面の課題への言及もあった。2例目の搬送先、兵庫県立こども病院の黒澤寛史小児集中治療科部長は、重い機材搬送が負担だと指摘した。
3・4例目の搬送先、東京都立小児総合医療センターの森本健司救命・集中治療部門集中治療科医長は、空港使用での厳格な時間管理に難しさがあるとした。
JCCNの福嶌教偉理事長は、PICU(小児集中治療室)などの施設を地方に新設するよりも、ドクタージェットで既存の高度医療機関に搬送したほうが、「国の経済的にもいいのではないか」と述べた。
7月9日から、追加でクラファンを実施することも明らかにした。
●実際的な課題、「詰める必要がある」 厚労省・佐々木課長
会見には、厚生労働省医政局の佐々木孝治地域医療計画課長も出席した。
この事業を国で本格的に実施しようとすれば、予算が課題となる。
佐々木課長は「救える命を救えるよう、できることはないか考えるとともに、既存の予算事業とのデマケーション(区分)や負担の在り方といった、実際的なところも詰めていかなければいけない。われわれも勉強し、皆さんと相談しながら詰めていきたい」と挨拶した。