1日の能登半島地震発生から、3週間近くたった。18日時点でもなお約1.5万人が避難生活を余儀なくされる中、全国から多くの医療関係者が、DMAT(災害派遣医療チーム)やJMAT(日本医師会災害医療チーム)などとして、被災地入りして医療支援に当たっている。ただ、被害が大きかった石川県北部へのアクセスは困難を極めており、支援が十分に行き届いていない。
「半島北部へのアクセスができない、連絡がつかないというのが、東日本大震災などこれまでの災害とは全く違う」。10日の会見で、日本医師会の細川秀一常任理事は、被災地を訪れた印象を語った。
細川氏は5~7日、JMAT先遣隊の一員として、石川県の七尾市などを訪問。しかし、交通渋滞に巻き込まれたほか、道路の損壊などの影響もあり、移動に多くの時間を要した。
●悪天候も課題
今回の地震で特に被害が激しいのが、能登半島北部の輪島市、珠洲市、能登町、穴水町の2市2町だ。現在、JMATの派遣は、公立能登総合病院内に設置した七尾調整支部を拠点に、派遣先を調整している。ただ、北部への派遣はなかなか進んでいないのが現状のようだ。
七尾市に診療所を構え、七尾調整支部での派遣調整などを担っている日医の佐原博之常任理事は、こう話す。「道路状況に加えて、天候も課題だ。先日も輪島に派遣しようとしたが、午後から大雪の予報だったため、中止せざるを得なかった」。1月に入り、被災地は雨や雪となる日も多く、北部入りを妨げる要因となっている。
北部へ向かう途上は電波状態が悪い地域もあり、事故が発生した場合に連絡が取れなくなる懸念があるためだ。日医は、DMATの派遣要請に当たって、極力、衛星電話を携行し、通常の携帯電話と同様に利用できるようにしておくなどの対応を呼びかけている。
●「重装JMAT」を派遣
さらに北部では、JMAT隊員の宿泊施設の確保が難しいようだ。佐原氏によると、七尾市内では断水などの影響はあるものの、営業しているビジネスホテルなどがある。こうした宿泊施設を利用して、七尾市から日帰りできる地域が、JMATの主な派遣先になっているという。
日医は、県北部へのJMAT派遣を強化する方針だ。難路の移動に対応できる車両などを装備し、体力のある若手で組織する「重装JMAT」を派遣する。今後、通常のJMATが数多く北部で活動できるように、足がかりとしたい構えだ。重装JMATは、災害急性期の活動を終えたDMATの隊員・装備を流用することを想定している。
●情報共有の取り組みを
被災地支援の長期化は、不可避な情勢だ。それに伴い、被災地の医療ニーズも段階によって変化していくことが予想される。
細川氏は17日の会見で、「数多くのチームが被災地入りして医療支援活動を行っているが、情報共有できていないケースが見られる」と指摘した。日々刻々と変化する医療ニーズを的確に捉え、それに対応できるチームを派遣するためにも、情報共有の取り組みが求められる。(岩崎 知行)